夏の昼下がり

今日も学校だ.

 

学校の正門をくぐり,日光と汗に洗われた体を携えて校舎に入る.

少しかび臭い冷房の臭いが夏を感じさせる.

普段はまるで効いてないように思える冷房も汗の気化熱のおかげでずっと快適に感じる.

「替えの肌着持ってくればよかったかな…」

教室に入ると友人が席に座っているので近くに座る.

少し前までは,すぐ隣に座れたものだが現代ではそうでもない.

いずれは,座席が撤去されたりして.

元々,自分は人との距離を取りたがる質なのですこしありがたい.

でも少し寂しく感じる.

 

そんな贅沢な時間を感じていると,教授が入ってきて授業が始まる.

鼻を出している学生に注意する様子,まさに現代的だ.

 

マスクをしていないことが罪悪の感を持たせる,そんな世の中に変貌してしまった.

課題の解説を聞きながら,ここを換算していれば正解だったのに…と悔しがりながら90分強を過ごす.

途中うつろうつろしつつ気が付けば教授のまた会いましょうの挨拶で授業が終わる.

友人と課題について語らいながら部屋をでて,部室に向かう.

 

部室がある建物は授業を行う建物とは屋根でつながっていないのでまた外に出る.

今度は冷えすぎた体が温まるような気がして気持ちが良い.

 

部室では待っていた別の友人や後輩としょうもないことを語らう.

大会の日程がずれましたがどうしましょう.

そういえばあの授業の課題は終わったかい.

研究室はどこになったのかい.

 

そうして何気ない時間を過ごしつつ部活内での仕事をこなす.

今度,大学の広報が取材に来るそうで.

そのことでまた盛り上がり,これこれ仕事に戻りなさいと言いこれを繰り返す.

 

少し経つと,後輩にプログラミングについて質問される.

この子は真面目で積極的に質問に来る.男子の比率が圧倒的に多いながらも良く頑張っている.

 

あぁ,ここの条件文がおかしいじゃないか.

あっ本当ですね,ありがとうございます.

 

このとき,いつぶりだろうか.

とにかくよいものを見てしまった.

自分は小学校を出てからは中高と男子校で過ごしたため年の近い女性というのは6年強見ていなかった.

当然「そういった」経験もないが,がめつく欲する訳でもなくそれでいて普通に接しようと努力している.

目を合わせるようにも努力している.

しかし,一度視線を首よりしたに送ってしまったのが過ちだった.

 

ふと我に返り,後輩に自分は用事があるから,と席を外す.

それと同時に部屋に入らんとしていた同輩を捕まえ,連れていく.

 

また外気で体が暖められる.

煙を吐きながら,友人とたわいもないことを話す.

 

すっかり夏だな.こないだまではどしゃ降りだったというのにな.

あぁ…

で,いきなり連れてきてなんだよ.

いや,まぁ言いづらいんだが,…さっき見ちゃったんだよ.

もしかしてお前,見たのか?例のあれを?

あぁそうなんだ.いつぶりだろうかな.懐かしいし,今でも脳裏にくっきりだよ.

懐かしい?よく分からないがよかったな.ずっと期待してたもんな.

別に期待してなんかないさ.ただこれは今晩夢に出てきそうだ.

そんなに良かったのか.みんなでお祝いしてやりたいところだよ.

お祝いって何言ってんだよ,少しは俺も反省してるさ.

さっきから言ってることが嚙み合わないな.お前,研究室配属の話だろ?

 

 

えっ胸チラの話してるんだけど

 

 

ヒグラシが鳴きだした.まだまだ夏は続く.